ゆかり見聞録

多趣味な低スペック人がゆかりの紋章を探し求めて描き続ける冒険記録

ルナティック・オライオン

 先日、Reバース講習会 和歌山の握手/お渡し会にて唐突に自分語りがしたくなった(やめて欲しい)私は成海瑠奈さんに自分の体験を語りだした(マジでやめろ)。

 

 これまでそんなに接近とかして来なかった私にとって特典会とかってどんな話するのが普通なのか、みんなどんな話してるのか全然わからない。しかし、特典会での自分はと言えば悪い事ではないがどうも「当たり障りのないこと」ばっかり言ってて面白みがない気がした。

 自分語りが良いことかというと正直あまりいいこととは思えないが、自分がどんな思いでオタクをしているのか、ここに立っているのかを「好き」とか「可愛い」以外の言葉で伝えたいと思ったのである。

 

 もちろん、30秒という極々短い時間の中では全てを語れなかったし(ディレクターズカット)上手く言葉を紡ぎ出せたかどうかも覚えていない。何度やってもこればっかりは緊張する。

 そんな中、私の手を最後まで握って話を聴いてくれた方がいた。私の推し(※1.)である。

 30秒の時間ギリギリで剥がされそうになる。自分も真っ正面を外れて、右側(※2.)へとはけようとする。その、最後の最後まで手を握って話を聴いてくれたのである。

 

とても嬉しかったです。

 

 その30秒で、そして和歌山での1日の間で語りきれなかったその「体験」は、話す機会が失われてしまった。もちろん、この程度の話で感動できるのは当人である私だけだろうし、別に誰も聴きたくもないかとは思う。

 語られることは無くとも、他の誰かの心に残るようなものでは無くとも、これはそんなオタクの時を越えた旅の物語である。

 

 2017年12月29日、私は初めて1人で横浜で行われたイベントに行った。

 大分生まれ/島根からの遠征民が初めて1人でやってきた横浜はやっぱり都会で、道もわからなかったし、なんか自分の場違い感が際立った。イベント自体もまだ自分にとって3件目で、やっぱりわからないことだらけだった。

 

 ここでは関係無いので内容にはいずれ別の機会で触れるとして、私は凄く感動した。どのくらい感動したって帰りにiTunes CardとGoogle play cardを同時に買ってホテルに帰るぐらい(?)には感動した。帰りの中華街で大量に半ば押し売りされてしまった天津甘栗に愛着が湧くほどに感動した。

 

 ライブハウスで行われたイベントが終了すると、速やかな退出が促された。名残惜しさを感じつつも、演者だけでなく、オタクに、スタッフに、そして箱そのものに「ありがとう」と感謝しながら外に出る。夕暮れ時に入ったライブハウスの外は、もう既に夜だった。

 その日は晴れだった。雲ひとつないその空には見知った模様があった。砂時計のような形にベルトのような三連星。宮崎に住んでいた頃宿題で観測したアレ、そう、オリオン座である。あの時はタイミングよく、ちょうど大分の山の中に居たため空気が澄んでいてその宿題はとてもいい出来だったと記憶している。

 オリオン座は88星座の中でも比較的観測しやすい。そのため、理科の授業などでもよく取り扱われ、形自体もよく覚えていた。

 田舎から都会へやって来て感じていた自分の場違い感。その上1人でイベントに来るのも初めてでそれは既に「疎外感」にすらなっていた。

 だが、「横浜にもオリオン座が輝いていた」。当たり前だが、その事実に私は涙した。その涙で滲む月光。オリオン座も月も、星達は皆、どこにいても照らしてくれるのだ。

 それからというもの、イベントやライブの度に会場からの帰りに各地で星を見た。オリオン座を発見するといつも安心できたし、月はいつも狂おしいほどに美しかった。赤い月も白い月も、黄色い月も、三日月も満月も、いつも違った美しさを見せてくれて、連番者に投げかける「今日の月めっっっっっっちゃ綺麗じゃない??」が口癖のようになった。

 

 実を言うと、その時のイベントの会場は「横浜ベイホール」だった。

 

 時は流れ、2019年12月23日。その「横浜ベイホール」でライブがあった。そう、「聖☆ドリオンパーティ2019」である。同じ12月。同じ会場で。内容に関してここで触れるのは無粋というものなので別の記事を参照されたし、だが結果的に凄く感動することになる。2年前と同じステージの上に、2年前と同じ柱に邪魔されながらもあの日と違う楽しさを貰ったのだった。

 ライブを終えて外に出る。脳内に残り、響き続けるキラーチューン。眠らない街、横浜はやっぱり都会で、今宵もどこまでもネオンが続く。夜なのに明るいこの街を、それでも照らす光が夜空に。その名はオリオン。その名は月。2年前と変わらずに横浜に輝くその光に「もう世界に煌めいてるじゃん......」と涙した。

 

 私の歴史は繰り返す。1度目は喜劇として。2度目もやっぱり喜劇として。

 

貴女が好きです。

 

(この記事は2020年2月16日に和歌山県のマナソース様で行われたReバース全国講習会600内の握手/お渡し会より一部抜粋、加筆・訂正を加えたものです。)

 

※1.本稿の執筆時、「推し」とはなんなのか、成海瑠奈さんは私にとっての「推し」にあたる存在なのかを悩んでおり、答えを未だ出せずにいるが、便宜上このように記述した。

 

※2.一般的に「人類の約90%は右利きである」と言われており、右手同士で握手をする都合上、握手会の列は左から形成することが多い。ここで言われている「右側」とは客側である私から見て「右側」のことを表しており、握手会を終えてはける方向を表している。余談だが、左利きのキャストさんの握手会で意図的に列形成を右側で行う事例はあるのだろうか。今後の課題の1つである。